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山と食欲と私。

 

「となりの外ごはん」というコラムで、さらりと紹介した漫画ですが、全然書き足りなかったので、本誌とは異なることを書いこうと思います。

 

なんで、この漫画を紹介しようと思ったかというと、フリーペーパー 「ピクニック 」の内容には合っているからです。(お外ご飯を食べに行くということね)レストランに食べに行くのとは明らかに違うので、ただのグルメ漫画ではない。かといって料理漫画でもない。その辺のところ、この「山と食欲と私」は、わりと趣旨に合っていました。

 

「ピクニック 」本誌でもイメージしているのは、それほど料理にもアウトドアにも熟知している訳でもないふつうの人が、ピクニック にたった1人でも出かけていく感じですが、この漫画の日々野 鮎美さんも「単独登山女子」と名乗って、オシャレな山ガールと差別化を図っているくらいですから、この辺もドンピシャでした。

 

でも、さすがに漫画の中は、しっかり登山をしているので、それなりの知識や経験も積んでいますね。その辺は、わりとリアルに描かれています。

外でごはんを食べるというのは、自己満足以外のなにものでもないのですが、今の時代、なんというか自己満足っていうことにあまり寛容でない気がします。

「お一人様」という単語は定着していますが、ライフスタイルの中で、やたら繋がりとかコミュニケーションを要求されていますよね? あなたも、スマホ片手にSNSのチェックに余念がない、っていうのはそういうこと。

 

だから、フリーペーパー 「ピクニック 」でも、何人でも1人でもいいから出かけて外でごはんでも食べてみたら? という趣旨の意味は、SNSの読者でも、友人知人身内でも誰でもない自分が、ただただホッと一息ついて、リラックスするだけの時間を持とうよ、という事なんです。

 

日々野 鮎美さんは、毎週末、登山に出かけることも珍しくないようですが、わりとストイックに、こういう時間を使ってリフレッシュされているんですね。そういうのが、すごく共感します。(まあ、1人だから漫画の中では、ひたすらぶつぶつと独り言で話が進んでいくのですが)自分に向き合うの、大事。

 

リアルな登山から、自然の様子が味わえるのも、この漫画のすごく良いところです。限られた装備と食材を使って、大自然の中で食をとる様子は、現場に居合わせたかのように錯覚してしまいます。自然を偉大に感じたり、恐れたり、和んだり、話によってそれぞれですが、登山というハングリーな場だからこそ、自然との共存を強く意識させられる訳ですね。

 

ピクニックも、それに比べたら、かなりゆるーい食をとりますが、自然を身近に感じるのは一緒です。身の危険を感じることはないですが、「ここ、こんな草生えてるんだ」「今、この花の季節なんだ」と気付いたりしますから、こういう感覚を研ぎ澄ませられるのは、リフレッシュ効果があるはずです。

 

近い将来、ピクニックの漫画が出るかはわかりませんが、(知ってる人がいたら教えてほしい)外ごはんの手本にするならば、この「山と食欲と私」は、かなりいい参考になります!

 

●まもなく第10巻が発売です。

●レシピ本も出ています。

●くらげバンチ https://kuragebunch.com/ で抜粋したお話が読めます。